138号2003年 3月号 の記事から

■効果と安全性、どちらが優先?

 ガンの新しい治療薬「イレッサ」で、多くの死者が出てしまいました。本当に痛ましい事です。しかし、この「イレッサ」は、今までにない画期的な抗ガン剤の一つなのです。今までの抗ガン剤は、ガン細胞そのものを攻撃し、同時に正常な細胞にも負担がかかりました。今回の「イレッサ」は、分子標的治療薬と呼ばれており、ガンの遺伝子や、ガンの転移に関係する遺伝子を制御します。すると、今まで無制限に増殖し転移していたガン細胞がおとなしくなることがはっきりしました。

 今までの抗ガン剤は、投与する量を増やせば、ガンを抑制する効果が上がるのですが、それよりも先に強い副作用が出てしまう場合が多かったのです。しかし、イレッサは、効果が出る濃度と、副作用が出る濃度に開きがあり、少ない量で抗ガン剤の効果を発揮し、副作用は少ない事が予想されました。また、臨床に応用する前のデータとしては、脂漏性皮膚炎(にきび)・下痢・肝機能障害などの副作用は、まれに見られましたが、今までの抗ガン剤よりは、副作用は随分少ない結果でした。
そして、いよいよ臨床の現場での応用となった訳です。

 床では、外科的にも、他の抗ガン剤でも、回復が難しい方に、この新しいお薬が使われる事になりました。例えば、肺ガンや腺ガンなど、従来の治療では効果が得られない方に、「イレッサ」が使われました。退院は無理と思われていた方が、胸部X線で、ガンの陰影が薄くなり、月に2回通院することで退院出来るようになっています。
 このように、今まで治療が出来なかった状態の方にこの「イレッサ」は効果を発揮したのでした。しかし、予想以上の副作用が発現し、亡くなってしまわれた方も多く出たことも事実です。

 過去においても、百人の方が服用して、ほとんど副作用がなかった新しいお薬を、一万人の方に使ってみると、今まで起きなかった副作用が出現する事は、現実に起きています。理想のお薬は、何万人の方に使って頂いても、効果がはっきり解り、副作用の出ない安全性の高いお薬が最高ですね。

 

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